【症例紹介】虫歯の治療経験がない歯を極力保存、ワイヤー矯正で八重歯を治療・20代矯正治療

2024年11月26日(火)

コラム


ブラケット装置によるワイヤー矯正で八重歯を治療した症例

今回は、ブラケット装置によるワイヤー矯正で八重歯を治療した症例の紹介です。

初診の年齢が25歳1ヶ月の女性です。
八重歯が気になるとのことで来院されました。

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歯並びの状態を客観的に観察

浦安の歯医者 矯正歯科 あらかわ歯科医院 ワイヤー矯正
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上顎犬歯(青丸)は左右とも「定位唇側転位(ていいしんそくてんい)」と専門用語で呼ばれる八重歯の状態です。

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左右とも犬歯が生えてくるスペースがありません。
左側よりも右側の方がスペースが狭く、そのためか中心が右側へわずかにずれています。

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下顎は左下側切歯(前歯の青丸)が「舌側転位(ぜっそくてんい)」と呼ばれる、内側に引っ込んでいる状態が見られます。臼歯部の青丸は親不知で、生えかたが気になります。

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レントゲン画像です。この画像で留意する歯に丸を付けました。

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下顎の左右親不知は「水平埋伏(すいへいまいふく)」と呼ばれる、横を向いた状態で生えています。

また、口腔内全体で大きな虫歯の歯はほとんどないため、上顎の右上第2大臼歯の白く写っている金属と左上第1大臼歯の白く写っている金属が際立っています。左上第1大臼歯は虫歯が深い時に行われる「抜髄(ばつずい)」処置が施されています。

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患者さまご希望の治療方法の聞き取り


ご相談の段階で、患者さまご希望の治療方法をお伺いします。
具体的には下記の内容になります。

  • 部分矯正による治療で改善させたいか?全体を治療したい?
  • どのような装置で治療をご希望か?(具体的にはワイヤーか?マウスピースか?)
  • 治療の予算はどれくらいで考えているのか?

こちらの患者さまは、もしも部分矯正が可能であれば予算面からもそちらで治療したいけど、部分だと難しいイメージがあるので、その場合は全体でも構わないとのことでした。

装置は可能であればマウスピースでの治療をご希望でした。

予算面では特にご希望はお持ちではありませんでした。

資料を収集して分析した上で、必要な治療方法と装置をご提案することで同意を得ました。

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資料を収集して分析、治療方針と装置の提案・相談

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正面のセファロレントゲン画像です。顔面の対称性は保たれています。

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側面のセファロ画像です。レントゲン画像では、前歯の噛み込み(専門用語で「被蓋(ひがい)と呼びます)が浅いです。

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上顎は親不知まできちんと生えているため、八重歯を改善するためには抜歯が必要です。
抜歯による矯正治療が必要なため、通常であれば、次のどちらかの方法で治療を行う場合が多いです。

  • 親不知を抜歯して「後方移動」と呼ばれる手法で改善する。この場合はマウスピースでも矯正治療が可能。
  • 左右の第1小臼歯を抜歯して抜歯スペースを利用して改善する。この場合、マウスピースだと臼歯部に「近心傾斜」呼ばれる副反応を可能性が考えられるため、ワイヤー矯正がお勧め。


今回は、これらのいずれの方法も考えませんでした。

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私が八重歯改善のために考えた抜歯部位は、画像青丸の右上第2大臼歯と左上第1大臼歯です。上顎はこの2歯以外で大きな治療をされている状態がないこと、特に左上は抜髄処置が施されている失活歯であるためです。

左上の第1大臼歯は10年以上先の将来を鑑みた時、他の健全な歯と比較して悪くなり抜歯しなければいけなくなる可能性も高いと考えます。

この場合、マウスピース矯正での改善も可能ではありますが、マウスピース以外の矯正装置の方が副反応を起こしにくく、治療期間の面でもメリットが多いです。

こちらは治療開始後、上顎の装置装着後に抜歯します。術前に抜歯するとそれぞれの1つ後ろのはが手前に動いてしまう可能性があり、抜歯スペースを有効に利用できなくなることも考えられるためです。

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抜歯予定部位を青丸で囲ったレントゲン画像です。

この2歯を抜歯したスペースを利用して八重歯を改善させることは充分に可能であると判断しました。

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下顎の矯正治療での問題点は左下側切歯のみですが、親不知の状態も歯並びを押してしまう可能性が高い等、気になるため、術前の抜歯で対応することにしました。

親知らずは「水平埋伏智歯」と専門用語で呼ばれる状態で、抜歯することにより歯並びへの影響が少なくなる可能性が高いです。

以上の分析した上での治療計画をまとめると

  • 下顎の水平埋伏智歯の状態で生えている左右の親不知を術前に抜歯する。
  • 上顎は右側第2大臼歯、左側第1大臼歯を抜歯する。但し抜歯スペースを有効に活用できるよう治療開始してから抜歯する。
  • 使用する装置は、ブラケット装置によるワイヤー矯正とその他固定式装置。

となりました。

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患者さまの希望を汲み、治療方針の修正と変更を行う


今回のご希望は、

  • 可能であれは部分矯正で治療したいが難しい場合、全体の矯正でも構わない。
  • 装置は可能であればマウスピースを希望。

の2つでした。


「2」は、抜歯が必要な場合はマウスピースでは副反応を起こしやすくリスクがあることと、抜歯部位に関して説明しました。抜歯部位は治療している歯(金属が入っている歯)を抜歯して健全な歯を残すことを説明し、ワイヤー装置での治療に同意を得ました。

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術前治療からスタート

まずは術前治療からスタートしました。
下顎左右親不知の抜歯から治療開始です。両側とも当院での施術が可能な状態でした。

こちらを抜歯後(治療期間2ヶ月)、上顎の装置を製作・装着です。

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「ディスタルジェット」と呼ばれる装置です。装着直後の画像です。

装着後、右上第2大臼歯と左上第1大臼歯を抜歯、左右の1番後方の臼歯(専門用語で「最後臼歯(さいごきゅうし)」と呼びます」に「バンド」と呼ばれる金属を装着しています。その画像が次の画像になります。

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装着して2ヶ月後の画像です。下顎はまだ装置は入れておらす、虫歯の治療をこの間に施術しています。

どのような仕掛けなのかというと、

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左側の赤矢印はプラスチック製のバネです。左側の最後臼歯を固定源として左側第2小臼歯を矢印方向へ引っ張っています。

右側の小さな黄矢印は六角レンチになっていて、青矢印のコイル状の金属製バネをツブすことにより、右側の第1大臼歯を後方へ押し出しています。

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ディスタルジェットを装着して8ヶ月後の画像です。左上第2小臼歯は途中で「遠心傾斜(えんしんけいしゃ)」と呼ばれる副反応を起こしてしまい、途中から引っ張る処置を休止しているため、隙間が残っています。一方で右側の第1大臼歯はこれ以上動かないため、ここからブラケットを装着してワイヤー矯正を開始します。

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いよいよワイヤーで歯を動かしていきます。

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ワイヤー装着して7ヶ月後の写真です。

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1年6ヶ月後の画像です。

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上顎の術後の画像です。ディスタルジェットを装着していから2年2ヶ月後です。

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一方、下顎は親不知の抜歯後、上顎の矯正治療と併行して虫歯治療を左右4ヶ所行い、上顎のブラケットを装着する1ヶ月前にブラケットを装着してワイヤーで治療を開始しました。

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ワイヤー装着を開始して1年5ヶ月後です。
初診時から2年5ヶ月、上顎のディスタルジェットを装着してから2年2ヶ月です。

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下顎の術後画像です。ワイヤーを装着して1年5ヶ月後の画像です。

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術後の正面画像です。

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診療情報

主訴上顎の八重歯
年齢・性別25歳1ヶ月(初診時) 女性
症状(診断)低位唇側転位が上顎両側犬歯に認められるアングル2級症例
治療方針
上顎は右上第2大臼歯、左上第1大臼歯を抜歯。
右上第1大臼歯をディスタルジェットにより遠心移動。遠心移動後にブラケットを装着してワイヤー矯正。下顎は矯正術前に左右親不知を抜歯、その後ブラケットとワイヤー矯正。
装置の種類
上顎のみディスタルジェット(上顎のみワイヤー装着前)
上下顎ともブラケット装置によるワイヤー矯正
治療に関しての副作用や留意点等:口腔内清掃を怠ると、歯肉炎や歯周病、う蝕罹患のリスクを生じる。矯正治療で使用する金属成分により、金属アレルギーの可能性がある。
治療期間2年6ヶ月(初診相談時、術前の歯科治療を含む)
通院回数40回