親知らずを抜くと痛いの?抜かないといけない?

2025年01月27日(月)

コラム


今回は親知らずのお話です。親知らずというと「抜くと痛い」とか「抜かないといけない?」というイメージがあるかと思います。
今回はこれらの不安や疑問点について書いていきたいと思います。

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親知らずって何?どの歯のこと?

浦安市の歯医者 矯正歯科 あらかわ歯科医院 親知らずの抜歯

人間の歯は、前歯(中切歯・側切歯)・犬歯・小臼歯・大臼歯というように分類されます。

小臼歯は上下左右2本ずつあり、4番目に生えているのを「第一小臼歯」、5番目に生えているのを「第二小臼歯」と呼びます。

大臼歯は上下左右3本ずつあり、6番目に生えているのを「第一大臼歯」、7番目に生えているのを「第二大臼歯」、3番目に生えているのを「第三大臼歯」と呼びます。

この第三大臼歯が親知らず(親不知)になります。別称で智歯とも呼びます。

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「親知らず」の語源


「親知らず 語源」で検索すると、次のような内容が出てきます。

  • 親が知ることなく生える歯であるため。
  • 昔は現代よりも医学が発達していなかったことと、栄養バランスのとれた食生活を送れなかったことで寿命が短く、親知らずが生えてくる頃には親が亡くなっていたため。
  • 親が子供の歯の手入れをしなくなる年齢になって生えてくるため。

「親知らず」が生えてくるのは、18歳かそれ以上です。17歳以下で生えてきているのはあまり記憶がありません。

親知らずの別称である「智歯」の「智」は物事をよく知り、わきまえているという意味や、物知り・賢いという意味があります。

親知らずのことを、英語では《wisdom tooth》と呼びます。
《wisdom》は知恵という意味で、「物事の分別がつく年齢で生えてくる歯」という意味が込められている点は、「智歯」という日本語ととてもよく似ています。

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抜かなくても大丈夫な親知らず


抜かなくても問題ない、抜く必要のない親知らずもあります。

浦安市の歯医者 矯正歯科 あらかわ歯科医院 親知らずの抜歯

28歳11ヶ月の男性です。
こちらのレントゲン画像の親知らず(青矢印)、上下左右の4本ともきちんと生えていて、しっかりと噛んでいます。
このような親知らずは虫歯になっていなければ、無理に抜く必要はありません。

浦安市の歯医者 矯正歯科 あらかわ歯科医院 親知らずの抜歯


こちらは別の患者様(38歳6ヶ月男性)のレントゲン画像です。
こちらの親知らずも4本とも問題なく生えています。
これらの親知らずを無理に抜く必要はありません。

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抜いた方が良い、あるいは抜くべき親知らず

浦安市の歯医者 矯正歯科 あらかわ歯科医院 親知らずの抜歯

25歳6ヶ月男性のレントゲン画像です。

こちらのレントゲン画像の親知らず(特に下顎の2歯)は、可能であれば抜歯を推奨します。

「水平埋伏智歯」と呼ばれる状態の親知らずです。左右とも第2大臼歯に向かって生えています。

完全に顎骨内に埋まっていれば抜歯の必要性は下がりますが、親知らずの歯冠部は粘膜には覆われているものの、顎骨からは歯冠部が出ている状態です。

第2大臼歯の手入れが悪く、歯垢が溜まってしまうと、親知らずと第2大臼歯の接触部分に入り込んでしまい、「智歯周囲炎」と呼ばれる親知らず周囲の粘膜が腫れて痛みを伴う炎症を起こす原因になったり、第2大臼歯に虫歯を作ってしまう可能性があります。虫歯の状況によっては親知らずと同時に第2大臼歯も抜歯しないといけなくなります。

それ以外ですと、親知らずの歯冠部に向かって生えようとする力により、歯並びが悪くなります。

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19歳7ヶ月女性のレントゲン画像です。

こちらの患者様の親知らずは、上下左右の4歯とも抜歯を推奨する状態です。

自然に歯の角度が変わり生えてくることはありません。

歯並びにも影響を及ぼす可能性が極めて高いですし、第2大臼歯に虫歯が出来れば親知らずと共に抜歯しないといけなくなります。

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抜いた方が良い親知らずをそのままにした場合

我々が抜いた方が良いと説明している親知らずを残した場合、どのように悪くなるのか?次のケースが分かりやすいと思います。

第2大臼歯にも虫歯ができてしまい、どちらも抜歯が必要になったケースのレントゲン画像です。

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右下の自発痛を主訴として来院された、28歳3ヶ月男性のレントゲン画像です。

わかりにくいので、心配な場所に丸を付けてみます。

浦安市の歯医者 矯正歯科 あらかわ歯科医院 親知らずの抜歯

丸で囲った箇所に虫歯があります。

レントゲン画像でここまでの影(専門用語で「透過像」と呼びます)がある場合、実際にはもっと虫歯が深くなっています。

自発痛の生じている黄色丸で囲った左下の虫歯を取ってみました。

浦安市の歯医者 矯正歯科 あらかわ歯科医院 親知らずの抜歯

虫歯を取った状態のレントゲン画像です。

このままだと、何がどのように悪いのかが分かりにくいですね。

浦安市の歯医者 矯正歯科 あらかわ歯科医院 親知らずの抜歯

当該歯の左側に写っている左下第1大臼歯と比較します。

それぞれの同じ箇所に青丸、赤丸を付けました。

わかりにくかもしれず大変恐縮ですが、以上の2点から、第2大臼歯はとても残せる状態ではありませんでした。

このレントゲン画像撮影ののち、第2大臼歯・第3大臼歯(親知らず)の両方を抜歯しました。

右下も同じ状態ではないかとても心配です。

ここまで虫歯が進行する可能性も考えられるため、抜いた方が良い、あるいは抜くべき親知らずの場合、抜いた場合と抜かない場合のメリットとデメリットをそれぞれ説明し、患者様ご自身に抜歯するか否かを決めていただいております。

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親知らずは抜くと痛いの?

親知らずに限らず、どの部位の歯でも抜歯当日は麻酔が切れると痛みはあります。
当然ながら内服薬の痛み止めを処方して症状は抑えます。
1回服用しても痛みが治らないか、治りにくい場合について説明します。

上の親知らずは痛み止め服用後、翌日以降に症状が残ることはほとんどありません。

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親知らずに痛みがあり来院された場合

「歯が痛い」という主訴で来院され、原因が親知らずである場合や、「親知らずが痛い」という主訴で来院された場合、いきなり抜歯するのではなく、まず痛みを取り除く応急処置を施術して、後日あらためて抜歯する場合がほとんどです。

もちろん例外はあります。下の親知らず周囲の粘膜が痛い場合、その原因が上の親知らずにある場合は、下の親知らず周囲粘膜の痛みを取り除く目的で上を抜歯する場合はあります。

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まとめ


当院では次の要件に当てはまる場合、抜かなくても大丈夫と判断しご説明しています。

  • 歯並びに影響がなく反対側に噛んでいる歯がある場合
  • 虫歯に罹患していない、または罹患していても治療が可能な場合
  • プラークコントロールが良好な場合


次の要件に当てはまる場合、抜くことを推奨するか、抜くべきであるということを強くお勧めしております。

  • 歯並びに影響を及ぼしている場合
  • 反対側に噛んでいる歯がない場合
  • 反対側に噛んでいる歯があっても、虫歯に罹患していて治療器具が届かず治療が困難な場合
  • プラークコントロールが様々な理由により不良で、それが原因で周囲の粘膜に炎症を起こし、腫れや痛みを繰り返している場合
  • プラークコントロールが様々な理由により不良で、それが原因で手前の第2大臼歯が虫歯に罹患しているか、罹患する可能性が考えられる場合