スポーツマウスガード完全ガイド(2)
2025年09月01日(月)
コラム
「スポーツマウスガード完全ガイド(1)」では、スポーツマウスガードの概要・重要性・種類・構造と素材・カスタムタイプの特徴という項目に分類して述べました。
今回は競技別の推奨される構造や、使用法、実際に使用される場合の実用的な内容について記述していきます。

競技別カスタムメイドスポーツマウスガードの構造ガイド
市販のマウスガードと異なり、歯科医院で製作するカスタムメイドタイプは、競技の特性に合わせ、厚みや何層構造にするか等を調整できるのが最大のメリットです。
ここでは、競技別における推奨される厚みや層構造とその構造にする理由について詳しく解説します。
1.格闘技(ボクシング・キックボクシング・MMA(総合格闘技)・柔道・空手等)
(1)推奨される厚さ:4.0~5.0mm
(2)構造:二層または三層構造
(3)理由:
- 顎や歯への直接的な打撃が非常に多いため、最大限の衝撃吸収が必要
- 外層は硬く、内層は柔らかい多層構造でクッション性を強化
- 奥歯までしっかりカバーし、直接的な打撃による歯の損傷や顎の骨折を防ぐ
2.アメリカンフットボール・ラグビー等
(1)推奨される厚さ:3.0~4.0mm
(2)構造:二層構造
(3)理由:
- タックルやヘルメット同士の衝突による衝撃が大きいため、厚めにして衝撃に備える
- プレイ中に声を出してコミュニケーションが必要なポジションも多く、厚みと会話のしやすさを両立させる必要がある
- 選手のポジションに応じて厚みの微調整が可能
3.バスケットボール・ハンドボール
(1)推奨される厚さ:2.5~3.0mm
(2)構造:一層または二層構造
(3)理由:
- エルボーや転倒による歯の外傷が多いが、格闘技ほどの衝撃は少ないため、格闘技と比較して厚みを抑えた設計を推奨
- 声を出してのコミュニケーションが必要なため、薄めで軽量なタイプが最適
- 2層構造にする場合は、外層を少し硬めにして耐久性を確保
4.アイスホッケー・フィールドホッケー・ラクロス
(1)推奨される厚さ:3.0~4.0mm
(2)構造:二層構造
(3)理由:
- パックやボール、スティックやクロスが顔面に当たるリスクがあり、前歯の損傷を重点的に防ぐ必要がある
- ある程度の厚さが必要な上に、口を閉じたままでも呼吸がしやすいようにする必要がある
5.野球・ソフトボール
(1)推奨される厚さ:2.5~3.0mm
(2)一層または二層構造
(3)理由:
- ボールやバットの偶発的な顔面直撃に備える
- ポジションによって厚さを変えることも可能
- 二層タイプにして奥歯の噛み込みを安定させ、パフォーマンスを向上にも寄与が可能
6.スケートボード・スノーボード・BMX・マウンテンバイク
(1)推奨される厚さ:3.0mm前後
(2)構造:二層構造
(3)理由:
- 転倒による地面への衝突で歯が破折する事故は多く、それに加えて顎の骨折リスクも考えられるため、十分な衝撃吸収が必要
- 長時間装着しても違和感が少ない、いわゆる装着感を重視する場合や、噛み合わせを安定させてパフォーマンスの向上を重視する場合、薄めで軽量タイプが推奨される
スポーツマウスガードを装着する時の注意点
市販品であってもカスタムタイプであっても、装着時の注意点は同じです。
下記の点をチェックしながら装着しましょう。
1.初めて装着する場合
マウスガードを初めて使用する場合、多くの人が「違和感がある」「うまくしゃべれない」と感じます。これは自然な反応で、口腔内に新しい器具を入れるため慣れが必要です。装着前に歯をしっかり磨き、清潔な状態で装着することが基本です。初めて使うときは短時間の練習から始め、少しずつ装着時間を延ばすと違和感が軽減されます。
2.適切なフィット感の確認方法
マウスガードは、歯と歯茎にしっかりフィットし、外れないことが理想です。
次のチェックポイントを確認しましょう。
- 口を開けても落ちない
- 軽く舌で押しても落ちない
- 頬や舌に強く当たらない
- 呼吸や発音が妨げられない
フィット感が悪いと、スポーツ中に外れて危険なだけでなく、衝撃吸収力も低下します。特にカスタムメイドの場合、これらの項目はほぼ問題ありませんが、市販品は自分で微調整が必要です。
3.息苦しさや発声のしやすさの確認
マウスガード装着時に息苦しさを感じる場合は、サイズが合っていないか、厚みが競技に適していない可能性があります。
チームスポーツではコミュニケーションが重要なため、発声のしやすさもチェックしましょう。カスタムタイプでは、歯科医が競技特性に合わせて製作しているため、呼吸や会話のしやすさはほぼ心配ない状態です。
STEPスポーツマウスガードのメンテナンスとお手入れ方法
マウスガードは当然ながら口の内に入れる装置(器具)のため、ご使用後は必ず手入れが必要です。使用したままだと、装置の寿命も短くなりますし、お口の中の健康ばかりでなく、全身の健康にも影響を及ぼす可能性も否定できません。
以下のチェック項目で、ご自身の使用方法を見直しましょう。
1.使用後の洗浄と乾燥
使用後は毎回しっかり洗浄することが重要です。
流水下で専用ブラシと専用クリーナーで優しく磨き、食べかす等を除去します。
熱湯は変形の原因になるため避けましょう。
「流水下」と表現すると「水を流しっぱなしで」とイメージしがちですが、食事の後の食器を洗うのと同じイメージです。
装置は疎水性なので、最後にタオル等で水分を十分に取り除きます。
2.専用ケースでの保管
清潔に保つためには、専用ケースで保管することが大切です。通気性のあるケースが理想ですが、もし用意できないようであれば密閉ケースでもOKです。
但し、密閉ケースだと湿気がこもり、細菌やカビが繁殖しやすくなるので注意が必要です。洗浄後はきちんと乾燥させてから保管しましょう。またケース自体も定期的に洗浄し、衛生状態を保ちましょう。
3.不快な臭いや菌の繁殖を防ぐコツ
マウスガードの不快なニオイや菌の繁殖を防ぐには、以下の対策が有効です。
- 定期的に抗菌剤入りの洗浄液で除菌・消臭を行う
- 使用後は必ず乾燥させる
- 直射日光や高温の場所に置かない
- 市販品の場合、2~3か月に一度は新品と交換する
清潔に保つことで、口内炎や感染症のリスクを減らし、快適に使用できます。
STEPスポーツマウスガードの寿命と交換時期
スポーツマウスガードは消耗品です。
使い続けることで劣化は必ず起こるので、交換のサインについて把握するようにしましょう。
交換時期の目安やその理由についてお伝えします。
1.破損や変形
一般的に以下のような状態になったら交換のサインです。
- ひび割れや欠けが見られる
- フィット感が緩くなった
- 表面が硬くなり弾力がない
- 使用中に外れやすくなった
これらを放置すると、保護性能が大幅に低下します。
2.定期的な交換が必要な理由
どんなに丁寧に使用しても、スポーツマウスガードは必ず劣化します。
特に、格闘技やラグビーなど強い衝撃が頻繁に加わるスポーツでは、1シーズンごとの交換が推奨されます。安全性を確保するためにも、目安として6か月~1年での交換を心がけましょう。
3.成長期の子どもや学生アスリートがスポーツマウスガードを装着する際の注意点
子どもの歯や顎は成長とともに形が変わるため、定期的な新調が必要です。数ヶ月ごとにフィット感をチェックし、歯科医でサイズの見直しを行うことが望ましいです。成長期に合わないマウスガードを使い続けると、噛み合わせや歯列に悪影響を与える可能性があります。
競技レベルが高い場合、長期的に使用する場合、歯科医院でのカスタムメイドタイプの製作がお勧めです。
STEPスポーツマウスガードのよくあるトラブルと対処法
1.フィットしない・外れやすい
市販のマウスガードは個々の歯型に完全には合わないため、外れやすいことがあります。
これを改善するには、マウスボイルタイプを再成型するか、カスタムメイドに切り替えるのが効果的です。
2.呼吸しにくい時の改善策
厚みがありすぎるマウスガードは呼吸を妨げることがあります。競技に合わせて薄型タイプを選ぶか、歯科医に依頼して噛み合わせや空気の通り道を調整してもらうと快適に使用できます。
3.痛みや口内炎が出る場合の対応
痛みや口内炎の原因を確認する必要があります。サイズが合っていない場合や部分的に粘膜に食い込んでいることによる口内炎であれば、歯科医院で削って調整することで改善できますが、市販品の場合は調整できない場合もあります。
STEPまとめ
スポーツマウスガードは、歯や顎を守るだけでなく、脳震盪のリスクを減らし、安心してプレーできる環境を整えます。市販品からカスタムメイドまで幅広い選択肢があり、競技や目的に応じて最適なものを選べます。正しい装着とメンテナンスを行うことで、長く安全に使用でき、結果的に治療費やケガのリスクを大幅に減らせます。
1本の歯を失った場合の治療費は保険診療であってもそこそこな金額になります。顎の骨折となれば入院や手術を伴います。
スポーツマウスガードへの投資は、このような治療費を未然に防ぐ役割が非常に高いと言えます。
アスリートにとってスポーツマウスガードは「パフォーマンスを守る保険」であり、安全なスポーツライフに欠かせない存在と言っても過言ではありません。
STEPよくある質問
Q1:スポーツマウスガードは試合の時だけでなく毎日練習でも使うべきですか?
A1:毎日使用するべきです。装着に慣れるということも必要ですし、接触や衝突が想定される練習では、試合と同様にマウスガードを使用すべきです。これにより、日常的に歯を守れます。
Q2:矯正器具をつけていてもスポーツマウスガードは使えますか?
A2:使用するのは難しいです。装置を保護するように装着せざるを得ず、口の中がいっぱいになってしまい、息苦しさもあると推察します。パフォーマンスが落ちるというよりも、プレイできません。
Q3:自分で作れるスポーツマウスガードと歯科医院製作の違いは何ですか?
A3:自作タイプは安価で手軽ですがフィット感や安全性が劣ります。歯科医院製作のカスタムメイドは衝撃吸収力が高く、長期間快適に使えます。
Q4:スポーツマウスガードをつけるとパフォーマンスが落ちてしまうか心配です
A4:適切にフィットしたマウスガードは、呼吸や発声に支障がなく、むしろ噛み合わせの安定でパフォーマンス向上につながることがあります。
Q5:小学生にスポーツマウスガードは必要ですか?
A5:接触のあるスポーツに参加する小学生には必須です。成長に合わせて調整が必要ですが、ケガ防止の観点から早期使用が望まれます。
料金等につきましてはウェブサイト内のページをご覧ください。