【症例紹介】ムーシールドで反対咬合を改善後、ワイヤー矯正で治療した10代女性の症例(2)

2024年06月28日(金)

コラム

【ブログ「ムーシールドで反対咬合を改善させた後、ワイヤー矯正で治療した10代女性の症例 (1)ムーシールド編」】の続きです。

ムーシールドで反対咬合を改善後、ワイヤー矯正で治療した10代女性の症例(1)

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前回の画像で状態の確認です
浦安の歯医者 矯正歯科 あらかわ歯科医院 ワイヤー矯正

ムーシールドをルールを守って装着していただけないまま2年が経過し、右上犬歯が「八重歯(やえば)」と呼ばれる「低位唇側転位(ていいしんそくてんい)」の状態で生えてきました。
奥歯の噛み合わせも初診時と比較するとやや改善していますが、完全ではありません。

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第2乳臼歯を除いて全て永久歯になりました。右上犬歯のスペースが全くありません。
右側側切歯が初診時のレントゲン画像で右上乳犬歯寄りにあり、生え換わりの時に2本の乳歯が脱落しています。
上顎全体の拡大も十分ではありません。
舌の内側からの圧力でもう少し拡大したかった状態です。

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下顎も上顎と同じで第2乳臼歯以外は全て永久歯になりました。
前歯に「叢生(そうせい)」と専門用語で呼ばれる重なりが若干残っています。
上顎と比較して問題は少ないように見えますが、前歯が完全に並んでいる状態ではないので、スペース不足はこちらも残ってしまっている状態です。

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問題点を洗い出し、この先の治療をご提案します

現在残っている問題点は以下の通りです。

  • 右上犬歯の「八重歯(やえば)」と呼ばれる「低位唇側転位」の状態。
  • 上顎前歯の右側偏位(上の前歯全体が右側へずれてしまっている状態)。
  • 上顎の拡大が不充分で、臼歯がきちんと噛めていない状態。
  • 下顎も拡大は不充分で下前歯に「叢生(そうせい)」と呼ばれる重なりを生じている状態。

上記4項目の中で最大の問題点は、「右上の「八重歯(やえば)」と呼ばれる「低位唇側転位(ていいしんそくてんい)の状態」です。
八重歯の改善が最優先で治療すべき内容になりました。

  • 患者さまはこの時点で8歳4ヶ月のため、治療の提案等は保護者の方に対して行います。

提案した治療内容は次の3点です。

  • 上下ともブラケット装置を直ちに装着して八重歯を改善する。
  • 第2大臼歯が生えるまで治療を続けるかどうかは両親の判断で決めてもらう。
  • 上下ブラケット装置のみで噛み合わせが改善しない場合、あらためてどうするか相談の上で決める。

ブラケット装置によるワイヤー矯正で上顎八重歯を改善させると、「2.」と「3.」は必然的に改善できます。

下顎もブラケット装置をによるワイヤー矯正を開始させると、下前歯の叢生は容易に改善されます。

第2大臼歯は通称「12歳臼歯」と呼ばれる永久歯でですが、実際には12歳で経てくるとは限らず、何歳で生えてくるのかが未知数です。現在の年齢を考えても年数がかなりかかることが予想されます。

以上の内容を説明の上で保護者である親御さんからは、治療を続けたいので治療方法については全面的に同意を得ました。また。期間が長くなっても良いので、第2大臼歯が生えるまで続けたいということで、治療を進めることとなりました。

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ブラケットを装着して治療再開です
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上下ブラケット装置を装着した状態です。
同日に上下は装着出来ず、まず上顎から装着し、次に下顎を装着します。下顎を装着したばかりの状態での画像です。

右上犬歯のスペースを少しでも確保するため「オープンコイルスプリング」と呼ばれるバネをワイヤーに通し、スペースを少しでも確保します。

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永久歯が先天欠如で乳歯を永久歯の代わりとして残す場合はブラケットを装着しますが、上下左右の第2乳臼歯は全て生え替わりを待つため、何も装着しません。

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ワイヤー装着開始して約2年後の画像です
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年齢が10歳5ヶ月でワイヤーでの治療を開始してから約2年後の画像です。下は通称「12歳臼歯」と呼ばれる第2大臼歯が完全では無いですが生えています。一方で上はまだ生えていません。

右上犬歯も、ほぼ問題ない状態で並んでいます。

上の第2大臼歯が生えるのを待ちます。

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Step4から約4年半後の画像です
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上の前歯のスペースはこの間に完全に閉鎖していたわけではなく、閉じたり開いたりを繰り返していました。
安定しない原因は、舌の突出癖が残ってしまっている可能性が否定できません。

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左右の第2大臼歯も生えています。
下の第2大臼歯との噛み合わせができるまでかなりの時間がかかりました。

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非抜歯での治療により、スペースがぎりぎりになっていることが原因ですが、下の第2大臼歯は噛んでいるのですが、「歯肉弁(しにくべん)」と呼ばれる咬合面の上に見える粘膜がまだ残っています。

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Step5から4ヶ月後、装置を除去して終了した状態です
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Step4の状態から歯と歯の間が再離開を3ヶ月間起こさないことを確認してから装置を除去します。

右上の犬歯は「低位唇側転位(ていいしんそくてんい)」と呼ばれる「八重歯」の状態で生えてきたため、左上の犬歯と比較して歯肉は(上の歯なので)上がってしまっています。

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上顎の画像です。このアングルからはとても綺麗に並んでいます。装置を除去直後の画像なので、「バンド」と呼ばれる金属のベルトを装着していた左上6番の歯肉はやや腫れ気味ですが、腫れは直ぐに治ります。

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まとめ

「ブログ「ムーシールドで反対咬合を改善させた後、ワイヤー矯正で治療した10代女性の症例 (1)ムーシールド編」で治療を開始してから2年後にワイヤーを装着しました。

本編でワイヤーを装着してから装置を除去するまで6年9ヶ月。
合計で治療期間は7年10ヶ月ほどかかりました。
ムーシールドの装着時にコンプライアンスが守られなかったこと、ご両親が第2大臼歯が完全に生えるまでの治療を希望されたことも長期間になった原因ではあります。

この当時はインビザラインファーストが始まっていなかったためですが、現在では、インビザラインファーストで最大で約18ヶ月でいわゆる「矯正1期治療」を終わらせ、永久歯との生え替わりを待って完全に永久歯の歯並びになってから「矯正2期治療」を開始できるため、ここまでの期間はかからないのではないかと考えております。