エアフローを使用した予防歯科
2025年06月26日(木)
コラム
《エアフロー》を使用した予防歯科・最新技術で叶える口の中の健康

歯医者に行くのは「痛くなってから」と思っていませんか?
もちろん痛くなってから行かれるのは間違っていません。しかしながら虫歯及び歯周病は、痛くなる等の自覚症状の起き始めが悪くなり始めではありません。ある程度進行してから痛みを始めとする自覚症状を発症します。
自覚症状が発症する前に悪い箇所を見つけて治療する、所謂「早期発見・早期治療」により結果として治療による通院回数を減らすことが可能になります。
悪いところができていなくても毎日のブラッシングだけでは磨き残しは発生し、それが徐々に蓄積されることにより、虫歯や歯周病に罹患する可能性は高まってしまいます。
お口の中に不安があれば、自覚症状がほとんどなくても歯医者にいらしていただき、是非歯周病や虫歯がないかを確認していただきたいのですが、どうしても歯医者に脚を運ぶのが億劫な場合、当院では今話題の「エアフロー」を使用した予防歯科を行なっております。これまでの予防による歯のクリーニングとは一線を画し、より優しく効果的な方法として注目されています。
また「エアフロー」は単なる「予防歯科」で使用するツールではなく、歯周病治療にも使用できる性能を持ち合わせた最新機器です。
今回のコラムでは、「エアフロー」とは何か?どのようなメリットがあるのか??実際の施術の流れを詳しく紹介します。歯の健康を守るための新常識を一緒にチェックしていきましょう!
STEPエアフローとは?

1.エアフローの仕組みと使用機器
エアフローとは、水と空気、そして専用の微細なパウダーを高速で噴射して歯の表面をクリーニングする、革新的なデンタルケア技術です。特に「グリシンパウダー」や「エリスリトールパウダー」といった身体に優しい素材が使われるため、歯や歯茎に余計なダメージを与えることなく、プラーク(歯垢)や着色をしっかり取り除けます。
この技術はスイス発祥で、EMS(Electro Medical Systems)という企業が開発した「エアフロー・プロフィラキシス・マスター」という機器が主流です。ジェット洗浄のように、粒子を歯の表面に当てることで、従来の器具で届かなかった歯周ポケットや歯間部の汚れにもアプローチできる点が画期的です。
2.従来のクリーニングとの違い
従来の歯のクリーニングは、PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaningのの頭文字を取った略称で「ピー・エム・ティー・シー」と言います)と呼ばれる方法で行っていました。これは、専用の機器(ブラシ、カップ、チップなど)と研磨剤を使って、歯の表面を磨き、汚れを徹底的に除去します。
このPMTCによるクリーニングが、エアフローを使用したクリーニングに謂わば、バージョンアップしてご提供をしております。
3.目的
バイオフィルムの除去
バイオフィルムは細菌の塊で、歯の表面にこびりついて、歯磨きだけでは落としにくいものです。エアフローでは、このバイオフィルムを機械的に除去することで、虫歯や歯周病のリスクを減らすことができます。
歯垢の除去
歯垢はバイオフィルムが肥厚し形成される細菌と細菌によって生成される代謝物の塊です。毎日のブラッシングでは除去できない場合もあります。エアフローではこれらも効率的に落とすことが可能です。単なるクリーニングだけではなく、歯周病治療の前段として除去し、除去できない歯石をエアフロー内蔵ピエゾンスケーラーで除去します。
着色の除去
ここで言う「着色」は喫煙や色素の濃い飲食物(コーヒー・紅茶・ブルーベリー・黒豆(煮豆)・カレー・ケチャップ等)が歯の表面に沈着することにより生じるものを言います。歯そのものの色、歯の治療による詰め物の劣化による変色は除去できません。
4.従来のPMTCとエアフローによるクリーニングの違い
従来のPMTCは、「2.」でも述べた通り、専用の機器(ブラシ、カップ、チップなど)と研磨剤を使って、歯の表面を磨き、汚れを徹底的に除去します。
実は、この時に使用する研磨剤が歯の表面のエナメル質に傷を作っていることが論文で発表されています。
エアフローは、水と空気、そして専用の微細なパウダー(グリシンパウダーやエリスリトールパウダー)を高速で噴射して歯の表面をクリーニングする仕組みのため、歯の表面を傷付けることなくクリーニングできます。
5.従来の超音波スケーラーとエアフロー内蔵ピエゾンスケーラーの違い
エアフローに内蔵されている「スケーラー」と呼ばれる歯石除去装置も「超音波スケーラー」なのですが、「ピエゾンスケーラー」という名称が付いています。
従来の超音波スケーラーの特徴
- 超音波振動を利用して歯石を物理的に除去します。
- 歯石除去効果は高いです。その反面振動が強いため、歯や歯茎に痛みや不快感を与える場合があります。
- 「歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき)」と呼ばれる、所謂「見える歯石」に使用され「歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき)」の除去には使用されません。
- 「ペースメーカー」を装着されている患者さんや、軽度であっても知覚過敏の症状がある部位には、使用する際注意が必要です。
ピエゾンスケーラーの特徴
- 振動や音が従来型よりも比較的穏やかで、痛みを感じにくいとされています。海外では「NoPain(ノーペイン)」と呼ばれることもあります。
- 従来型と比較すると歯石除去効果は弱い場合もありますが、これは振動を起こす原理の違いによるもので、歯の表面を傷付けにくく、独自の注水方式により、仮に歯石が残っていても病状を起こしにくい状態にできます。
- 歯石除去に使用する「チップ」と呼ばれる先端の器具の形状が多様で「歯肉縁上歯石」はもちろんのこと「歯肉縁下歯石」の除去も可能です。
- 「ペースメーカー」を装着されている患者さんにも問題なく使用できます。軽度の知覚過敏の症状がある場合でも使用可能です。
- エアフロー内蔵ピエゾンスケーラーは、従来の超音波スケーラーに比べて、歯や歯茎への負担が少なく、より広範囲のクリーニングが可能です。しかし、パワーは超音波スケーラーに劣るため、頑固な歯石除去には時間を要します。
「ピエゾン」の意味
ピエゾンスケーラーの「ピエゾン」は、ギリシャ語で「圧」を意味する「piezo」に由来します。水晶時計の発振原理と同じピエゾエレクトリシティー(圧電現象)を利用した超音波スケーラーであることを示しています。
具体的には、圧電素子に電圧をかけると振動する性質を利用して、歯石を振動で除去する機器です。圧電素子の振動は、超音波の周波数帯(25,000~40,000Hz程度)で行われます。この振動によって、歯に付着した歯石を効率的に除去します。
ピエゾン方式のスケーラーは、チップが直線的に振動するのが特徴です。振動や音が抑えられており、痛みを軽減できるため、「ノーペイン」と呼ばれることもあります。
予防歯科の重要性
1.虫歯・歯周病の予防のために
「歯医者は治療の場所」というイメージはもう古いかもしれません。
虫歯や歯周病は初期段階では自覚症状が少なく、気づいたときには進行しているケースも少なくありません。だからこそ、何も症状がないうちから定期的にプロによるチェック、メンテナンスを受けることが大切になります。
エアフローを使った予防歯科は、そうしたリスクの早期発見・早期対応を可能にし、将来的な大きな治療を未然に防ぎます。歯が痛くなる等の自覚症状が出てから後悔するよりも、未然に防ぐほうが通院回数や治療内容の面で、確実に時間もお金も節約できます。
2.定期的なメンテナンスの効果
定期的なメンテナンスを受けることで、毎日のブラッシングで落としきれない歯垢や歯石の蓄積を防ぎ、口の中の環境を良好に維持ことができます。
また、口臭の予防や歯の自然な白さを保つ効果もあり、美容面でもメリットが多いと推察されます。
さらに歯周病の治療を経てメインテナンスによる予防を継続することで、全身の健康にも良い影響があることがわかっています(関連コラム「歯ぐきが腫れているだけではない!本当に怖い歯周病のお話」)。
定期的なメンテナンスは単なる口の中のケアだけの問題ではなく、全身の健康を守るためにもとても重要です。
定期的なメンテナンスを受けていただきたい来院間隔は、口の中のコンディションが患者さんごとになってきます。良好なコンディションを維持できている場合は6ヶ月です。通常は3~4ヶ月ごとが丁度良いです。患者さんからもっと短い間隔で来院したいとご希望がある場合や、3ヶ月でもコンディションの悪化が心配な場合は毎月来院している場合もあります。6ヶ月よりも間隔が開いてしまうと、良好なコンディションで維持できている方でも何かしらの問題を生じ、結果的に治療による通院が発生する場合が多いです。
エアフローの具体的なメリット
1.痛みの少ない施術体験
エアフローによるクリーニングは、まず痛みを感じません。但し、ピエゾンスケーラーを使用する場合は「痛い」と感じる可能性が高いです。ジェット噴射されるパウダーが優しく歯の表面を撫でるようにして汚れを落とすので、痛みや不快感が極めて少なく感じます。
歯医者が苦手な方にとってはまさに救世主と言っても過言ではない器具です。
2.短時間で効率的な処置
従来型のPMTCと呼ばれるクリーニングと比べて、エアフローによるクリーニングは短時間で効率的な施術が可能です。PMTCよりも広範囲のクリーニングが可能なため、施術時間の短縮に直結します。スピーディーで、かつ丁寧なクリーニングが実現できるのです。
3.歯の着色やヤニの除去に最適
日常的なコーヒー、紅茶、赤ワイン、喫煙などによる着色汚れも、従来型のPMTCによるクリーニングと比べてエアフローなら驚くほどきれいに落とすことが可能で、歯本来の白さを取り戻すことができます。
STEPエアフローの対象者と適応症
1.エアフローの対象者
エアフローの魅力は、あらゆる世代・ニーズに対応できる汎用性にあります。
例えば以下のような人に特におすすめです 。
- 歯医者が苦手で痛みに敏感な人
- コーヒーやタバコなどによる着色汚れが気になる人
- 矯正器具を装着中で、ブラッシングが難しい人
- 歯周病のリスクが高い、または既にかかっている人
- ホワイトニング前の下地クリーニングをしたい人
これまで「歯のクリーニング」のことを「痛い(歯石除去を伴う場合)」「時間がかかるので面倒である」などのようにイメージされている人ほど、エアフローの快適さには驚かされるはずです。さらに、小学生以上の子どもでも対応可能で、ファミリーで予防歯科を始めるきっかけにも最適です。
2.矯正治療中・インプラント装着後のケア・歯周病の治療や予防
従来型のクリーニングではアプローチが難しかった「矯正装置の隙間」「インプラントの周囲」「深い歯周ポケット」は、エアフローならしっかりケアできます。
特に矯正中の方はブラッシングが難しく、汚れがたまりやすい状態ですが、エアフローはその隙間にもしっかり届き、清潔な口腔環境をキープしてくれます。
また、歯周病の治療あるいはメンテナンス時において、急性症状がなければ深い歯周ポケットにも使用可能です(専用のハンドピースと専用チップを使用します)。歯周病を悪化させることなくケアできるのも大きな魅力です。
3.虫歯治療後の詰め物や被せ物は入っている部位の予防
被せ物や詰め物は、コンポジットレジンと呼ばれる樹脂、金属やハイブリッドセラミック、セラミックで製作されています。従来の方法では傷つけてしまう恐れがありました。
エアフローで使用する専用パウダーは、非常に微細でかつソフトなため、それらの被せ物や詰め物にダメージを与えにくい性状になっています。

エアフローによるクリーニングとホワイトニング併用のお勧め
1.エアフローとホワイトニング
歯の着色が気になりホワイトニングをご希望される方が稀においでになります。そのためここであらためて整理してご説明します。
端的に説明すると、エアフローは「歯の掃除」、ホワイトニングは「歯の美白」です。
エアフローは歯の表面の汚れや着色を落とすことで歯を白くします。
一方でホワイトニングは歯に染み込んだ色素系沈着物を化学的に漂白します。
歯を白くするアプローチが異なりますので混同しないよう注意が必要です。しかしながら混同していても大丈夫です。当院では施術開始前にどのように違うのかを丁寧に説明し、できるだけご希望に沿うかたちでお勧めしてます。
2.併用すると効果倍増ですが順番が大事です
実は両方を組み合わせることで効果は倍増します。
順番は「エアフロー → ホワイトニング」が鉄則です。
エアフローで歯の表面をきれいにしてからホワイトニングを行うと、ホワイトニングの薬剤が浸透しやすくなり、効果が期待できます。
逆にエアフローを後回しにすると、着色汚れが薬剤の浸透を邪魔してしまうため、十分な効果が期待できなくなります。
STEPまとめ
当院ではエアフローを使用した予防歯科を行なっております。
まずは歯周病や虫歯がないかを確認の上で、それらに罹患していれば適切な治療を行います。そして治療した部位が再び悪くならないようにしたいですし、罹患していない部位が再び悪くならないようにしていくのが理想です。
しかし、それらがどうしても億劫な場合、エアフローを使用したクリーニングにより表面上の汚れを綺麗にし、その気持ち良さをご体感いただけるところからでもスタートできたらと考えております。私個人の感想ですが、エアフローは想像以上に快適で、爽快感があります。
STEPよくある質問
Q1:妊娠中でもエアフローは問題ないですか?
A1:基本的には問題ありません。但し、「つわり」等の体調不良がない時期がお勧めです。
Q2:エアフローが使用禁忌の全身疾患はありますか?
A2:ほとんどの場合問題ないのですが、一部の循環器系疾患で使用が禁止されています。必ず正確な病名を申告して下さい。
Q3:エアフローを使用することでホワイトニングと同じ効果はありますか?
A3:エアフローは歯の表面の沈着している汚れを取ることにより、歯本来の自然な色になることが期待できます。本来の歯の色が白い場合「クリーニングにより歯が白くなる」のですが、これは決してホワイトニングと同じ効果ではありません。
エアフローによるクリーニング後、ホワイトニングを併用するとより高い美白効果が期待できます。
Q4:小学生の子供でもエアフローは使用できますか?
A4:はい、問題なく使用できます。当院では矯正治療中の方から通常の検診でも使用していますが、念のためお通いの歯科医院に「小学生でも対応しているか?」「対応している場合どこまでの処置で対応可能なのか?」についてはご確認下さい。