【症例紹介】セラミックによる前歯の審美治療
2023年05月25日(木)
コラム
今回は症例紹介です。
オールセラミックによる前歯の審美治療をご紹介します。
オールセラミッククラウンによる前歯の審美治療・40代女性の症例
患者さまは40歳代の女性です。
全体の検診を主訴として来院されました。
正面から見ると、一見問題なさそうです。・・・が、
正面の前歯を裏側から見ると、色むらが見えます。
アップにすると、やはり何かあります。
実は、裏から詰め物がされていて、それが劣化して詰め物と歯との境目にギャップができてしまい、汚れが溜まっている状態なのです。
では、どうして前歯の裏側に詰め物がされているのでしょうか?
撮影したレントゲンに答えがあります。
赤枠の丸印の箇所、以前虫歯が深く「抜髄(ばつずい)」と言って、神経を取る処置が施されています。
根の治療の後、そのまま詰める治療で処置が完結しています。これは当院の施術ではなく、他院での処置です。
神経を抜いた歯は、専門的には「無髄歯(むずいし)」とか「失活歯(しっかつし)」といいます。
それに対して、神経が残っている歯を「有髄歯(ゆうずいし)」とか「生活歯(せいかつし)」といいます。
歯髄は、神経の組織だけでなく動脈・静脈・リンパ管で構成されていて、身体から歯に栄養の供給を行っています。
抜髄処置は神経組織だけでなく、動脈・静脈・リンパ管も取ってしまうため、身体から栄養が供給されなくなり、エナメル質・象牙質の組織が脆くなってしまいます。
歯髄は極力残した方が良いのは間違いないのですが、虫歯が深い場合に無理に残す事で冷たい物や温かい物がしみる、痛いなどの症状を起こしたり、歯髄が失活してしまい歯髄組織自体が腐敗する事もあります。
そのため、虫歯が深い場合の抜髄処置は止むを得ません。
抜髄処置(歯の神経を取る処置)が施されていて被せ物が入っておらず、「充填(じゅうてん)」という詰める治療で処置が完結している場合、破折や抜歯に至るリスクの説明があり、それでも患者さまが被せる治療を望まず、破折や抜歯リスクの可能性を承知した上での処置であれば、それは同意の上での治療なので問題ないかと思います。
しかしながら、その説明を受けて今回のような治療に至っているケースはほとんどありません。
こちらの患者さまも前医ではそのような説明は受けたことがなく、充填処置のみで治療が終わったとのことでした。
歯の破折は硬い物を噛まなくても起こす可能性があります。
歯の象牙質は「象牙細管(ぞうげさいかん)」と呼ばれる細かい管で構成されています。樹木の木目のような構造です。
この象牙細管の走行に沿って折れやすい力がかかることで起きるためです。
さて、先ほどの裏側の画像ですが、詰め物と歯との境目にギャップが生じていると書きました。ギャップの幅はマイクロメーター(μm)レベルでは確実に起きています(1μm=1/1000mm)。
そのため、こちらの詰め物を除去して根の治療が必要になります。
こちらの歯は、次の順序で治療を進めました。
- 裏側の詰め物を除去し、根の治療をやり直しする。
- 歯の補強を行い、歯が折れにくい状態にする。
- 仮歯を製作して最終的な被せ物が完成するまで装着してお過ごしいただく。
- 最終的な被せ物を装着する。
根の治療が完了し、撮影したレントゲンです。痛み等は元々ないので、痛みを起こさないよう注意しながら治療、根の治療を終わらせた状態です。
当院では、上記の❷から保険診療か自費診療かを選択していただきます。
こちらの患者さまはオールセラミックによる治療を希望されました。
最終的な被せ物が入った状態です。
本当は左側(左上2番)も被せ物を一緒に作り変えるとより綺麗になるのですが、ご希望されていなかったため、こちらはこのままです。
いかがでしたか?
この後は、この歯が悪くならないよう、予防していくことが大切になります。
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