【症例紹介】ワイヤー装置で八重歯を治療・10代矯正治療
2023年09月22日(金)
コラム
今回はワイヤー装置で矯正治療をした10代女性の症例です
初診の年齢が12歳1ヶ月の女性です。
八重歯と乱杭歯(叢生)が気になるとのことで来院されました。
顎のスペースが足りず歯並びが凸凹になっていたり、重なりあって生えていたりする状態です。
見た目が悪いだけでなく、歯ブラシが届きにくいため虫歯や歯周病のリスクが高いといわれています。
ワイヤー装置で八重歯を治療・10代女性矯正治療
上顎犬歯は八重歯(低位唇側転位(ていいしんそくてんい))の状態です
左右とも犬歯が入るスペースがありません。特に右側はスペースが全くないため、中心が右にずれています。
下顎は前歯に乱杭歯(叢生)が見られます。
この段階で、希望の治療方法を聞き取りするのですが、初診時の年齢が12歳1ヶ月なので保護者の方から聞き取りをします。
特別な希望はなく、「綺麗にして欲しい」とのことでした。
親知らずを除いて第2大臼歯が生えていないので、レントゲンで確認します。
パノラマ撮影です。
丸印は第2大臼歯です。レントゲン上では位置的には問題なさそうです。
赤矢印は親知らずです。下の親知らずは将来「水平埋伏(すいへいまいふく)」と呼ばれる状態になりそうです。
側方セファロです。バランスは悪くないです。
正面セファロです。前歯が右側に2~3mmずれています。
分析した上での治療計画は、
・上顎は第1小臼歯、下顎は非抜歯か第2小臼歯の抜歯。
・第2大臼歯が生えてきてから治療開始するか、直ぐに治療を開始する場合は第2大臼歯が生えてくるまで歯並びをコントロールする。
今回ご希望されているのは「綺麗にして欲しい」というものです。
そのため第2大臼歯が生えてきてからの治療開始はご希望に反します。
仮に治療の開始年齢があと数年経っていて、それに加えて第2大臼歯が生えてきていれば、治療計画通りに抜歯をご提案していたかもしれません。
また、相談時の年齢が12歳1ヶ月であることを鑑みると、この年齢で小臼歯を抜歯して矯正治療をすることは、骨格的成長も見込めるためとても抵抗があります。
そこで、次のご提案し、同意をいただきました。
- 上下とも非抜歯で治療を開始、途中で何か問題が生じるようであれば、その時点で抜歯の可能性を検討する。
- 第2大臼歯がどれくらいで生えてくるかは現状ではわからないが、生えてくるまでは治療を継続する。
今回選択したのは「カリエールディスタライザー」という装置です。
この装置単体では歯は動きません。下顎にも装置を入れ、その装置の「バンド」と呼ばれる金属のベルトに装着されているフックを固定源として「カリエールディスタライザー」に備わっているフックとの間に矯正治療用の輪ゴムを引っ掛け、歯を動かします。
4ヶ月後の画像です。
右側はかなりスペースができました。左側は一見スペースができていないように見えますが、実は犬歯が移動して内側に動いています。
右側の噛み合わせの画像です。
左側の噛み合わせの画像です。
噛み合わせのバランス確認すると、これで後方への移動は限界です。この時点でワイヤー装置に切り替えます。
ワイヤーを装着した上顎の画像です。内側には「トランスパラタルアーチ(TPA)」と呼ばれる装置を装着し、動かした歯が後戻りを起こさないように固定しています。
ワイヤーを装着した下顎の画像です。こちらは内側の装置を除去しています。
ワイヤーを装着開始してから7ヶ月後の画像です。
術後の画像です。
治療期間は5年7ヶ月かかりました。
第2大臼歯は上下のワイヤーを装着してから2年後に生えてきました。
そこから装置を入れて術後画像の位置に並べるのに2年かかりました。
途中で何度も本人と保護者に状況を説明し、治療を継続するかどうかを確認しながら進めていきました。
本人も保護者からも「綺麗にしたいので」という言葉をいただきながらなので、期間こそかかりましたが、大変ご満足いただけた症例です。
治療期間5年7ヶ月(17歳8ヶ月)
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