【症例紹介】ワイヤー矯正・固定式装置で八重歯等を改善した10代女性の症例
2023年06月09日(金)
コラム
ワイヤー矯正・固定式装置で八重歯等を改善・10代矯正治療
今回はワイヤー矯正と、その他固定式装置を使用した矯正治療を紹介します。
犬歯(けんし)または糸切り歯と呼ばれる3番目の歯が「低位唇側転位(ていいしんそくてんい)」と専門的に呼ばれる状態で歯並びが悪くなっている通称(俗称)です。
初診時の年齢が10歳11ヶ月の女性です。八重歯が気になり来院されました。
上顎の左右犬歯は「八重歯」の状態です。
上顎左右の「第2小臼歯」と呼ばれる小さな奥歯が、この歯並びだと破線の赤丸印の辺りに生えてくるはずなのですが生えていません。
上顎内側の粘膜が盛り上がっているようにも見えるため、埋伏している状態かもしれないのですが、この段階では不明です。
一方で下顎は目立った所見はありません。
この段階で、希望の治療方法を聞き取りするのですが10歳11ヶ月なので、ご本人というよりも保護者の方からご希望を聞き取ります。
「どのようにしたら良いのかわからないので、治療方法・使用する装置等こちらに一任する」とのことでした。
インビザラインによる治療も可能なのですが、本人が装置を入れてくれるかが不安であるとのことでしたので、ワイヤー矯正をはじめとする固定式装置で進めていくことで同意を得ました。
第2小臼歯は、「先天欠如(せんてんけつじょ)」と呼ばれる、歯自体が無い可能性もあるため、まずはレントゲン撮影で確認です。
レントゲン所見の矢印が第2小臼歯です。生えることが出来ず「埋伏(まいふく)」している状態です。
セファロレントゲンの側方画像です。
一見上下の前歯が傾斜していて、出っ歯に見えなくもないのですが、レントゲンに写り込んでいる鼻と上下口唇のバランスはとても良い状態です。
上下の前歯は、この位置を出来るだけ動かさないようにして、八重歯を改善させたいところです。
分析した上での治療方針は、
・上顎は左右とも第1小臼歯または第2小臼歯を抜歯する。
・下顎は抜歯しない(非抜歯)。
・装置はワイヤー矯正、インビザラインによるマウスピース矯正どちらも可能でした。
今回、親御さんはマウスピース矯正には不安がありワイヤー矯正を希望されています。よく話を伺うと親御さんだけでなく、本人もマウスピースを入れられるか?装置を管理できるかに対して、不安を持っていました。
抜歯に対してはこちらにお任せというところは変わっていなかったため、こちらから非抜歯での治療を提案しました。それによりもしも出っ歯になるようであれば、その時に抜く可能性はお話しし、それについては同意をいただきました。
次の内容で同意を得て治療を開始しました。
- 装置はワイヤー矯正を始めとする固定式装置。
- 上下とも非抜歯。
- 上顎はもしも出っ歯になるようであれば、抜歯の可能性がある。
ワイヤー矯正による治療を開始する前に「GMD(ジー・エム・ディー)」と呼ばれる装置で治療を開始します。
よく見ると、右上の第2小臼歯は生え始めています。
装着を開始して4ヶ月後の画像です。
もう少しスペースを確保したかったのですが、装置の構造上これ以上動かすことができなくなり、ここで装置を外してワイヤー矯正に切り替えることにしました。
ワイヤー矯正開始して4ヶ月後(治療開始から8ヶ月後)の画像です。
ワイヤー矯正開始して10ヶ月後(治療開始から1年2ヶ月後)の画像です。
一方、下顎はどうなっているかというと、上顎がワイヤー矯正開始して10ヶ月後、治療開始から1年2ヶ月後にワイヤーを装着開始しました。
術後の画像です。
治療期間ですが、上顎のワイヤー矯正を開始してから2年、装置の装着期間はトータルで2年4ヶ月。
最初の相談開始からだと2年8ヶ月でした。
治療を振り返って
いかがでしたか?
抜歯による治療を選択した場合、もしかしたら治療期間はこれよりも数ヶ月から半年は短くなったかもしれませんが、抜歯をしない「非抜歯」の治療でここまで綺麗にすることが可能でした。
治療の開始年齢が11歳3ヶ月ということも抜かない治療を私の方でお勧めしたきっかけでもありました。
一方で保護者の方がお子様の歯並びへの関心が薄いと、今回のような治療には結びつかない可能性があります。
まず、本人が歯並びを綺麗にしたいという気持ちであることは大切ですが、本人をその気にさせる親御さんの熱意も重要であるように思います。
どのような状態でも気兼ねなく、ご相談いただけたらと思います。
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