ムーシールドの治療例と装着方法
2024年10月01日(火)
コラム
今回はムーシールドのお話です。
ムーシールドにつきましては診療案内→小児矯正治療をご覧ください
当院では反対咬合の患者さまに対してムーシールドを使用して治療する場合があります。
基本的にはいわゆる「様子を見る」ことはしません。
STEPムーシールドの治療例
まずは治療例をご覧いただきます。
初診時の年齢が3歳10ヶ月の女児の患者さまです。
初診時から2ヶ月後、4歳0ヶ月でムーシールド装着を開始しました。
初診時から11ヶ月後、ムーシールド装着開始して11ヶ月後の画像です。
治療回数は初診時から14回、ムーシールド装着開始してからは月1回の来院のため11回でした。
STEPムーシールド装着時の状態
3色の薄い赤青黄色で色分けされているのがムーシールドです。
実際はレジンによる一体型の大きな構造物になっていますが、装置の上部・咬合面部・下部でその役割が分かれているので、このように色分けされています。
赤色の部分は上顎で、舌の圧力で歯並びが押し出されるように歯並び全体を覆います。
青色の部分は下顎で、舌の圧力で歯並びが押し出されないようにすることと、舌を前方に出した時に自然と上顎に行くような構造となっています。
黄色の部分は装置を噛んで入れるので、その時に装置が噛む力で割れないよう、厚みを作って製作されます。
装着時間は就寝時と就寝時以外の起きている時に1~2時間を確保してもらいます。
STEPムーシールドに関するQ&A
これまで装着した患者さまご本人やそのご両親から治療中に頂戴したご質問をQ&Aにまとめました。
Q | ムーシールドの装着時間を教えて下さい。 |
A | 起きている時に最低1時間、最大で2時間。加えて寝ている時。これを毎日毎晩必ず行なって下さい。 |
Q | 装置は寝ている時だけの装着ではダメですか? |
A | 寝ている時だけでは不充分で、必ず起きている時の装着が必要です。 |
Q | 寝ている間だけの装着だけでは不充分な理由を教えて下さい。 |
A | 寝ている時の装着により反対咬合の原因の1つである「低位舌(ていいぜつ)」による下顎の過成長を予防する効果はありますが、正しい舌の位置を覚えることは出来ないため、治療効果を充分に発揮できないためです。 |
Q | 寝ている時に入れることは習慣になったのですが、日中に装置を入れるのを嫌がります。 |
A | 装置は正しいポジションで入れることにより、自然と舌が上顎を押しやすくなるような構造になっていますが、意識的に舌を上に持ち上げて行く必要があると感じています。 この装置は舌のトレーニングの意味合いもありますので、寝ている時の装着が習慣化しているのをお休みするのは心苦しいところではあるのですが、寝ている時の装着をお休みして日中の装着に注力を注いで下さい。 |
Q | 「低位舌(ていいぜつ)」とは何ですか? |
A | 舌は本来、「切歯乳頭(せっしにゅうとう)」と呼ばれる上顎左右中切歯の裏側にある突起に先端を触れるのが普通なのですが、これが出来ておらず、習慣的に下顎の裏側にある状態を「低位舌(ていいぜつ)」と言います。 |
Q | 低位舌でどうして反対咬合になるのですか? |
A | 低位舌により下顎全体を押してしまい、下顎の成長を促進させてしまいます。寝ている時の装着はこれを予防する効果を期待できます。 |
Q | 寝ている時にいつの間にか装置が外れていいます。どうしたら良いですか? |
A | いつの間にか外れてしまう、あるいは寝ている時に無意識に外してしまうのは仕方ありません。中々朝まで装置を入れられないケースは実を言うと少なくありません。毎晩装着して寝ることをトライし続けて下さい。 |
Q | 装着している時によだれ(涎)が出てしまいます。どうしたら良いですか? |
A | 起きている時の装着は口を閉じていることも重要で、装着しながら口が開いてしまっていることによりよだれ(涎)として出てしまいます。 少し大変ですが、装置を入れている時は口をきちんと閉じること、そして装置を入れたまま溜まった唾液を飲込むようにして下さい。 「嚥下(えんげ)」と呼ばれる飲みこみの動作を、正しいポジションで行えるようになるトレーニングになります。 |
Q | 嚥下(えんげ)」が正しいポジションでできないとどのような問題があるのでしょうか? |
A | 低位舌とも関係がありますが、低位舌で嚥下が正常にできないと、嚥下の時に下顎を押してしまう動作となり、下顎の成長を促進してしまう可能性があります。 下顎の成長を促進してしまうことにより、反対咬合も進んでしまう可能性があります。 |
Q | 装着中にどうしてもお喋りしたくなり、装着時間を確保出来ません。 |
A | 装着しながらのお喋りは治療効果が薄れてしまいます。可能であればお喋りせずに1時間継続しての装着が望ましいです。それがどうしても難しい場合、例えば「5分間は黙って装着、その後3分休憩」を繰り返して装着することをお勧めします。 5分間はどんなことがあってもお喋りをしないで装着します。その後の休憩時間で沢山お喋りして下さい。この方法で大切なのは、休憩時間もきっちり守りこと。3分休憩したらすぐに装着を再開して下さい。 なお、装着時間と休憩時間は好きなように決めていただいて大丈夫です。 |
Q | 下の前歯の歯並びがガタガタです。この装置を入れているのに全く治っていません。 |
A | ムーシールドの留意点の1つなのですが、下の歯並びを改善する構造にはなっていません。 反対咬合の状態を一刻も早く改善させ、別の装置で下顎前歯の乱杭歯を改善する必要があります。 |
まとめ
- 装置を正しいポジションと入れ方で装着し、加えて起きている時の装着時間を確保できていると、場合によっては半年かそれ以下で改善する場合もあります。
- 当院での最短の改善期間は、1ヶ月というケースが1例ありました。
- 現実的には慣らしてから装着することが習慣化されることがほとんどです。
- また反対咬合だけでなく、下の前歯が乱杭歯だったり他の問題も複合的に起きていることの方が多いので、一刻も早く反対咬合を改善させ、それらの治療を開始して行く必要があります。