ムーシールドとインビザラインファーストによる矯正1期治療の症例

2025年03月22日(土)

コラム

ムーシールドとインビザラインファーストで矯正1期治療を完了した男児の症例

今回は初診時の年齢が7歳0ヶ月の男児の治療例です。
矯正相談で来院されました。

反対咬合(受け口)と下顎前歯がスペースが不足して叢生(乱杭歯)であるとのことです。
歯並びの状態を客観的に確認します。

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歯並びの状態を客観的に確認します。


正面の画像です。この画像では6歳臼歯が生えているかはわかりませんが、上顎の見えている部位は全て乳歯です。
左上の「乳中切歯」と呼ばれる乳歯は永久歯との生え替わりで脱落しています。
下顎は前歯4本が永久歯に生え替わっています。
ここまで生えているのにも関わらず「切縁結節(せつえんけっせつ)」と呼ばれる、生えたての永久歯に見られるギザギザの形態が残っています。

少しわかりにくい画像ですが、上下の乳犬歯(青矢印)の噛み合わせは反対咬合と呼ばれる、逆転している状態になっています。

上顎の画像です。右上の6歳臼歯は生えている途中、左上の6歳臼歯も右上よりは生えていますがまだ完全ではありません。
乳歯が脱落している部位ですが、永久歯が生えてくるスペースは十分にあります。

下顎の画像です。前歯は全て永久歯に生え替わっていますがスペースが不足していて綺麗に並んでいません。左右の6歳臼歯も完全には生えていません。

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患者さまの希望している治療方法をお伺いします

今回は7歳0ヶ月の男児なので保護者であるお母様からお伺いします。

ご希望は次の通りです。

  • 治療方法は問わない。問わないというより何が適切なのかわからない。
  • どうしたらいいのかわからないが、問題点はきちんと治療したい。
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資料を収集して分析、治療方針と装置の提案・相談

術前の画像に加えてレントゲンを撮影します。
当院ではこの年齢でのセファロレントゲンは原則撮影しません。

永久歯の先天欠如歯はありません。まだ生えていない永久歯も顎の中にきちんとあります。しかしながら生えてくるためのスペースは上下どちらも明らかに不足しています。
下顎の画像で、前歯のスペースが不足していました。

反対咬合は、下顎と比較して上顎劣成長しています。この年代の反対咬合の場合、それに加えて下顎も劣成長している場合が多く、「下顎の成長が不十分な上に、上顎の成長がそれよりもっと不足している」というのが実を言うと多い印象です。
このケースも正にそれに当てはまる状態です。

分析した上での治療計画は、

  • ① 上顎の永久前歯が生えてくるまで、または生えてきて反対咬合を改善させるまではムーシールドを装着。
  • ② ①の後にインビザラインファーストで永久歯が生えてくるスペースを確保する。
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患者さまの希望を汲んで、治療方針の修正と変更を相談します

保護者であるお母様のご希望は、問題ある状態を改善させたいとのことで、<Step3>で立案した治療計画をそのままご提案したところ同意が得られました。

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術前・術中・術後画像の比較

ムーシールド装着開始時の画像です。
ムーシールドの詳細はブログ「ムーシールドの治療例と装着方法」をご覧下さい。

ムーシールド装着を開始して10ヶ月後の画像です。

この状態であればインビザラインへの移行は問題ないと判断、次の予約時にインビザライン製作のための口腔内スキャン予定で、来院が翌月になり、それまでムーシールドの装着を続けてもらいました。


インビザライン製作開始のスキャン時の正面画像です。
上顎左右中切歯の噛み合わせが正常になりました


インビザライン製作開始のスキャン時の上顎の画像です。
上顎左右側切歯が並ぶスペースがありません。どちらも完全に生えていませんが、「近心捻転(きんしんねんてん)」という状態です。


インビザライン製作開始の下顎の画像です。
右下側切歯が「近心捻転(きんしんねんてん)」という状態でスペースが不足しています。


術後の正面画像です。
インビザライン装着を開始して約9ヶ月半後でここまで並びました。


術後の上顎画像です。

術後の下顎画像です。

これでいわゆる「矯正1期治療」が終了しました。
今後は残っている乳歯が全て永久歯に生え変わるまで経過観察します。
永久歯の歯並びになった時点で「矯正2期治療」を開始するかどうかを検討します。

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診療情報

主訴反対咬合
年齢・性別7歳0ヶ月(初診時)・男性
症状(診断)混合歯列期初期の反対咬合
治療方針上顎左右1番(中切歯)が萌出するまではムーシールド装着。萌出後はインビザラインファーストを使用しての矯正治療。今回行うのはいわゆる「矯正1期治療」と呼ばれる治療で、1期治療終了後残っている乳歯が全て永久歯に生え変わった時点で「2期治療」を開始するかどうかを検討する。
装置の種類ムーシールド、インビザライン
治療に関しての副作用や留意点等ムーシールドもインビザライン可撤式(かてつしき:取り外しが可能であるという意)であるため装着ルールを守らないと治療が進まらい。
口腔内清掃だけでなく装置の清掃も怠らないようにすることが重要で、装置の清掃を怠ると、歯肉炎やう蝕罹患のリスクを生じる。
治療期間2年0ヶ月
通院回数26回