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保険でできる大臼歯の白いかぶせ物

今回は「保険でできる大臼歯(一番奥の歯)の白いかぶせ物」についてのお話です。

先生

一番奥の歯が保険治療で白くできるように
なりました!

目次

保険でできる大臼歯の白いかぶせ物

中医協(中央社会保険医療協議会)より、大臼歯に適応となる非金属性の被せ物の材料について発表がありました。

大臼歯にのみ保険適応となるCAD/CAM冠(キャドカムかん)の材料です。

CAD/CAM冠(キャドカムかん)の適用範囲がさらに拡大

浦安の歯医者 あらかわ歯科医院 保険のかぶせ物

これまでは「金属アレルギー」による診断名で、医科の医療機関より依頼または診断書を持参の場合のみ、第2・第3大臼歯はCAD/CAM冠での治療が可能でした。

また、第1大臼歯は「上下左右の第2大臼歯が完全な状態で残っていて、咬合支持(きちんと噛んでいる)がある」ことを条件としてCAD/CAM冠での治療が可能でした。

今回発表された材料を使用する場合、それらの条件は一切なくCAD/CAM冠での治療が可能となります。

この材料が保険適応として発表されたことにより、前歯・小臼歯・大臼歯全てで金属を使用しないかぶせ物での治療が可能になりました。

一方、こちらの材料は色が1種類のみとなります。
これまでの材料は制限こそありますが、数種類の中から色を選択でき(これは患者様に選んでいただくものではなく歯医者の方で選択するものですが)できるだけ既存の歯の色に近づけることはできました。

今回の材料は、その選択肢が全くありません。とにかく強度重視です。

また、ブリッジやインレー(詰め物)は保険適応ではありません。

令和5年12月1日よりこちらの材料を使用して治療が可能となりました。

保険の白い奥歯・利点と留意点

利点及び留意点をまとめると次のようになります。

利点

  • 全ての大臼歯に保険診療で白い被せ物を入れることが可能になりました。
  • 従来の材料と比較して細かい条件無し。

留意点

  • 色の選択は1種類のみです。
  • インレーやブリッジ、及び連結冠では使用できません(使用できるのは単独冠のみ)。

保険の白い奥歯・材料について

続いて材料の具体的なお話です。

「PEEK」(ピーク)と呼ばれる樹脂材料を主成分とした製品を使用します。

浦安の歯医者 あらかわ歯科医院 保険のかぶせ物

PEEK(ピーク)とは

「ポリエチルエーテルケトン(Polyether ether ketone)」の頭文字を取り「PEEK」と書いて「ピーク」と呼ばれています。

PEEKの特徴

  • 耐熱温度は約250~260℃で、連続温度は260℃です。条件次第では300℃まで耐久可です(耐熱性)。
  • 200~260℃熱水中や300℃の加圧熱水・スチーム内でも使用出来ます(耐熱水性)。
  • 耐薬品性にも優れていて、多くの化学薬品に対して安定しています。濃硫酸以外の薬品には溶けません(耐薬品性)。
  • 引っ張り強さは90MPa(メガパスカル)以上、引っ張り弾性率は3000MPa以上、伸び率は25%。
    曲げやねじれに対する機械的強度もあります(剛性)。加えて、ガラス繊維や炭素繊維と組み合わせる事でさらに強度を上げることができます。
  • 耐摩耗性と耐衝撃性が強い
  • 優れた電気絶縁性があり、電子部品や電気絶縁体としても使用されます。
  • 加工しやすい材料で、射出成形、押出成形、加工、切削などの方法で形成することができます。
  • 安定した分子構造のため放射線の影響を受けにくく、硬化や割れ等の劣化が起こりにくい(対放射線性)。
  • 燃えにくく、燃焼した場合の煙や有毒ガス等が他の素材と比較して少量(難燃性)。
  • 屋外自然環境に対しての耐久性は劣ります(対候性)。

歯科分野以外の代表的な用途

保安部品や高負荷のかかる箇所などに使用されます。

  • 航空機部品:航空機用コネクター、タービンブレード、配管バイブ
  • 医療機器部品:内視鏡先端部品、チューブのジョイント、コネクタ
  • 自動車部品:エンジン周辺の部品、クラッチ部品、アクチュエーター、ギア

歯科分野での保険適応CAD/CAM冠以外の用途

  • 歯科器具:軽量でありながらも耐摩耗性が高く、加工性が良いため歯科器具や手術用具として利用されています。
  • インプラント:PEEK製のアバットメントが金属の代替材料として使用される場合があります。
  • 補綴物のフレーム(枠組み):被せ物やブリッジの構造において、金属フレームの代替材料として使用する場合があります。この場合のかぶせ物やブリッジは保険外の治療になりますが金属アレルギーの患者さんに適しています。
  • 顎関節デバイス:顎関節の問題を解決するために使用されるデバイスに適しているとされています。

歯科分野でPEEKを利用する場合のメリット

  • 耐摩耗性と生体的合成

    PEEKは優れた耐摩耗性を有しており、天然歯との相互作用が良好です。また生体適合性があり、口腔内での快適な使用が期待できます。
  • X線透過性

    PEEKはX線透過性があり、レントゲン撮影やCTスキャンなどの画像診断が必要な場合、金属と比較してその特性を活かした診断が可能です。
  • 軽量性

    歯科用途では、インプラントの上部構造物を含めた補綴物では口腔ないでの快適性を確保する必要があります。
    保険外治療ではPEEKの軽量性が、これらのデバイスの着用時に負担をかけません。
  • 化学的安定性

    PEEKは口腔内の科学的な環境に対して安定しています。唾液や食品との接触による変質や劣化がほとんど起きないため、長時間の使用にも適しています。
  • 高強度な構造材料

    PEEKは高い機械的強度を有しており、インプラントや補綴物を設計する上で、高い耐久性が求められる場面で利用されます。
  • CAD/CAM技術との適合性

    今回保険導入された製品だけでなく、自費治療で使用されるCAD/CAM材料により製造されるデジタルプロセスに適しています。
    これにより、精密な金属アレルギーを有する患者様に配して、PEEKは歯科用金属の代替材料として利用することができます。

歯科分野でPEEKを利用する場合の留意点

歯科でPEEKを利用する際の最大の留意点は色調です。
他の歯に厳密に合わせる事ができません。

工業製品としてのPEEK材は色調が「グレー」です。これを歯科保険適応内・適応外に関わらず歯科分野で製品加工された材料は「A1相当のアイボリー色」とされています。

歯科で一般的に「アイボリー色」というと「A3」よりもダークな色調のイメージです。また複数の色調を製品化出来ておらず、PEEK材を利用する際の主用途は、今回の保険適応で利用される目立たない奥歯(臼歯)で利用するのが色調面からも現実的ではないかと思われます。

いずれにしても、今回のPEEK材の保険適応開始は、金属の代替材料としてのメリットを最大限に活用したいと考えております。

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